May 18, 2010
会計ソフトと会計法人のそれぞれの利用メリット
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朝日新聞の1月23日付け記事「仕事メールで好印象」には、考えさせられることがある。確かにこの記事の目的は、仕事メールの実務的な問題やポイントを取り上げているのだろうが、それにしても今や頻繁に使われるメールをテーマに議論をするせっかくの機会なのだから、メールの根本的問題に一言でも二言でも触れて読者が考えるきっかけを与えて欲しいものだ。内容のほとんどが、あまりにも皮相的すぎる。
それはITというテーマから、おりしも「ヤフー知恵袋」に入試問題を投稿してカンニングした問題について、多くの識者の意見が、問題の根源に迫るものがなく皮相的であることにも似る。まず、この問題から取り上げてみよう。
本事件を、多くの識者やジャーナリズムは「不正再発防止」、あるいは「情報教育の問題」として捉えている。果たしてそんな皮相的な捉え方で、問題は解決するのだろうか。
「投稿カンニング」事件について、3月4日付け読売新聞社説は、「大事なのは、今回の事件を教訓にして、実効性のある再発防止策を講じていくことだ。」として、試験中にケイタイを預かったり、電源を切ったケイタイを机上に置かせたり、妨害電波を奨励したりすべきと、ただ再発防止策を主張しているにとどまっている。さらに、同日付け毎日新聞社説は、「学校教育の中で子供たちに電子機器やネットの不正利用、情報の悪用などを強く退ける心をはぐくむことが肝要」と。あるいは、原清治仏教大教授は「学校教育の中で、これまでより一歩踏み込んだネットのモラル教育が必要だ。」(日本経済新聞2011.3.4.)と、ジャーナリズム・識者こぞって情報機器の使い方の教育に焦点を絞った主張をしている。
一方、「社会全体で責めるほどの罪ではない。しっかり反省させ、情状酌量すべきだろう」(井上敏明六甲カウンセリング研究所長、朝日新聞2011.3.4.)と、当事者の処罰だけに矮小化した議論もある。また世論の反応の1つの現れとして、3月4日までに京大に寄せられた200件近い電話のうち約90%が、「監視が甘かった」「逮捕はやりすぎ」「予備校生がかわいそう」という感情的な感想だという(毎日新聞2011.3.4.)。現象だけを捉えたコメントや感情論が大勢を占める。
中にごく少数だが、「入試は、“公平で客観的”だと思われている点数だけを基準にして、人を見ない。」「日本の受験文化が行き詰まっている。子供がどんどん減っている時代に、点数で線を引く入学試験を続けなきゃならないのか。考え直す時期じゃないか。」(養老孟司東大名誉教授、朝日新聞2011.3.4.)という、大局を見た議論があるのは救われる気がする。
「投稿カンニング」事件は、皮相的見方ではなく、根源的な捉え方をしないと問題は解決しない。まず1つには、モラルの欠如に対する教育の問題である。不正や人に迷惑を掛ける考え方や行為は、どんな場合でも絶対に認められないのだという考え方が、幼少の頃から親や家庭や地域社会から陰に陽に教育され、刷り込まれていて、あらゆる場面で反射神経として現れるものになっていなければならない。それが今の社会で欠けていることを認識し、そこから親・家庭・地域・学校の教育が構築され直されなければならない。
2つ目には、従来から長い間行われて来て、いまだに改善の兆しさえ見えない、旧態依然とした暗記能力中心のペーパーテストによる入学試験選別方法の矛盾である。もうそろそろ、論文形式・ディベイティング形式などのような方法に重点を置いて、人間の総合力や可能性を見出そうとするテストに変えていくべきだ。
今回の事件は、以上2つの問題の解決に取り掛かるきっかけにすべき絶好の機会なのだ。誠に残念ながら、世の大勢としてそれをみすみす見逃して、小手先の議論に終始している。
3つ目に、一般に取り沙汰されている情報教育の問題がやっと出てくると考えるべきだ。
さて、本論のメールについてである。
1月23日付け朝日新聞記事「仕事メールで好印象」での「仕事メール」についての指摘は、件名や送信者名の手抜き、クレーム対応をメールで済ませようとする気遣いのなさ、不用意なccメール・転送メール、相手のことを考えない開封確認メール、読みにくい長文メール、絵文字などについての注意だ。しかし、ビジネスメールにしろ私的メールにしろ、日頃の業務や日常生活の中で安易に使われすぎて、最も根本的で重要なことが置き去りにされている。そこのところを指摘し、ユーザーに考えさせることこそが必要であって、それによってメールの実務的なことも自ずと解決するはずである。
その辺の議論が欠落すると、ITについての判断や対処の仕方を誤る。たかがメールであるが、ビジネス上も私的にもこれほど普及して情報手段のメジャーの位置を占めたからには、実務的議論で終始せず、メールのあり方を根本から見直しておかなければならない。
(1)まずメールより何よりも前に、始めに「直接コミュニケーション」と「手書き文章」ありきと考えるべきである。こつぜんとメール単独で存在するのではなく、「直接コミュニケーション」と「手書き文章」という礎の上にあるべきだ。
例えば、前々回の記事「心のない情報は組織を破壊する」でも指摘したように、重要な人事異動について、しかも近くの座席にいる部下にメール1本で通達を出すという、想像もできないことが平然と行われている。メールやパソコン上のデータだけでは、人情の機微や感情などを捨象されてしまうことに気付き、あくまでも直接コミュニケーションをメーンと位置付け、メールをその補助手段として捉えなければならない。
また書家石川九楊は、パソコンのキーボードによるインプットに疑問を呈する(「文学界」2000年2月号)。「雨が降る」と書こうとしたとき、文字変換で「飴」や「振る」が出てくると、思考の滑らかな流れが妨げられる。「思念は広がり、思考はせり上がろうとする。ところが、機械は次々と同音異義の奇怪な文や文字を画面に映し出す。ここで、せり上がろうとする思考とその無自覚の意識は、遂には、疲労困憊状態に陥り、白熱を欠いた、平板な思考に流れ」るとする。一方、アメリカの古典学者でマクルーハンにも多大な影響を与えたとされるセントルイス大学名誉教授ウオルター・J・オングは、「どんな発明にもまして、文字は人間の意識をつくりかえてしまった」とし、文字文化によって精神の深さが生まれたとしている(W.J.オング著、桜井直文他訳「声の文化と文字の文化」藤原書店)。
私たちは、「直接コミュニケーション」と「手書き文章」の重要性を再認識しなければならない。そして、それを前提にメールの位置付けをすべきだ。
(2)次に、メールといえども、あるいはメールであるが故に、機械的に扱うのでなく、常に心を込めるよう努めなければならない。「ビジネスメールの本質は、"思いやり"にあり。相手への配慮を忘れるな。」は、言い得て妙だ(平野友朗・他著「ビジネスメールの常識・非常識」日経BP社)。手紙を書くときは、それなりの心構えを持って机に向かい、書き出すはずである。あらかじめ構想を練り、相手の気持ちをおもんぱかり、修正の利かない墨やインクであるがゆえに緊張を強いられつつ、ある程度の覚悟を持って、心を入れて書くものである。一方メールだからと、緊張感を欠くことが許されていいはずはない。
受け取ったメールを不快に感じた人は、65%以上もいる。しかし不快に感じた人のうち65%以上が、それを相手に指摘したことがない。相手を不快にしていることを、当人は殆ど気づいていないということだ。不快に感じた内容は、1位が「言葉遣い」(42.0%)、2位が「内容が分かりにくい」(41.6%)、3位が「開封確認要求」(27.6%)となっている(上掲書、アイ・コミュニケーション実施「ビジネスメール実態調査2010」)。まさに、コミュニケーションや文章の力、そしてマナーの基本が訓練されていない現れであろう。
メールを単なる連絡手段として捉えるのではなく、人間関係構築のための有効な手段の1つとして捉えて利用するように心がければ、自ずから心がこもるはずだ。
(3)さらに、メールを単なる便利な連絡手段と考えず、情報を得る手段・与える手段という位置付けで考えるべきである。便利さと言い、スピードと言い、取り扱える情報量と言い、とても手紙に比すべくもない。送信側・受信側両者にとってできるだけ有用と考えられる情報を与えよう、あるいはできるだけ価値ある情報を得ようとすれば、メールを有効活用しようという気持ちになり、メールに対して軽々しく無礼な姿勢で臨めない。メールを尊重する認識が出てくる。
(4)ここで初めて、冒頭の朝日新聞記事や前掲書「ビジネスメールの常識・非常識」などで取り上げられている、メールの実務的基本を守れという主張がテーマとして取り上げられる順序になるべきなのだ。上記(1)(2)(3)をしっかりと認識していれば、実務的基本は自ずと守られるはずだ。【増岡直二郎(nao IT研究所)】
(ITmedia エグゼクティブ)
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